「全部止めても本当に大丈夫?」
「親が戻る可能性があるなら残すべき?」
親が施設に入ると悩むのが、実家の光熱費をどうするべきかという問題です。
安易な停止にはリスクが伴います。
ライフラインを完全に止めてしまったために、家の中にカビが充満したり、配管のトラブルで悪臭が発生したりしては、大切な実家の資産価値を大きく下げてしまいかねません。
この記事では、空き家管理の視点や将来の売却、税金対策まで踏まえ、実家の光熱費を「止めるべきか、残すべきか」の判断基準について解説します。
家計の負担を減らしつつ、資産価値を守るためにも参考にしてみてください。
親が施設に入ったら実家の光熱費はどうするべき?
親が施設に入ると、これまで当たり前のように支払っていた実家の光熱費をどうするべきか悩む方は少なくありません。
「誰も住んでいない家に毎月お金を払い続けるのはもったいない」と感じますが、電気・ガス・水道をすぐに止めればよいとは限りません。
場合によっては契約を残した方がよい場合もあります。
大切なのは「今後その家をどうする予定なのか」を踏まえて判断することです。
住んでいなくてもかかる基本料金と二重負担の現実
最も大きな悩みは、施設費用と実家の維持費による二重の支出です。
電気・水道・ガスは、たとえ一度も使わなかったとしても基本料金が発生し続けます。
これらを合計すると、月に数千円から1万円を超えることも珍しくありません。
年間では10万円単位の出費となり、家計を圧迫する大きな要因となります。
親が自宅へ戻る可能性がある場合は慎重に判断する
まず確認すべきは、入所が長期的なものか一時的なものかという点です。
もし自宅へ戻る可能性があるならば、安易に解約すべきではありません。
解約してしまうと、再契約の手間や再開時に立ち会いが必要になることもあるからです。
親の体調や施設の契約内容を考慮し、慎重な見極めが求められます。
判断基準は「今後その家をどうするか」の方向性
光熱費を止めるか残すかで迷ったときは、「今後その家をどうする予定なのか」を基準に考えると整理しやすくなります。
たとえば次のような状況によって適切な選択は変わります。
| 近いうちに売却予定 | 光熱費を整理しやすい |
| 空き家として維持する予定 | 最低限の契約を残す場合もある |
| 将来的に子どもが住む予定 | 完全停止は慎重に判断 |
| 親が戻る可能性あり | 継続契約が安心 |
誰も住んでいないから全部を止めるのではなく、実家を今後どう扱うかを踏まえて、必要な契約だけを残す考え方が現実的でしょう。
実家の電気は止めるべき?残すべき?
誰も住んでいないなら解約した方が節約になりますが、空き家管理や防犯の観点から、あえて通電を継続するケースもあります。
電気を残した方がよいケースや、費用を抑える方法について解説します。
通電を継続すべきケース(冷蔵庫・防犯ライト・24時間換気)
空き家になっても電気を残しておくべきケースは次の3点です。
| 冷蔵庫 | 中身を空にして処分するまでは通電が必須です |
| 防犯対策 | センサーライトや録画機能付きインターホン、タイマー式の照明などは、空き家であることを悟らせないための重要な防犯策になります |
| 24時間換気システム | 近年の高気密住宅では、換気を止めると瞬く間にカビが発生し、建物の価値を大きく下げてしまいます |
このように設備や管理状況を確認したうえで判断することが大切です。
アンペア変更で基本料金を最小限に抑える方法
電気は必要だが、料金を抑えたいという場合は、契約アンペア数を下げるのが有効です。
一般的な家庭では30〜50Aほどで契約していますが、照明や換気扇程度しか使わないのであれば、10〜15A程度まで下げることで、基本料金を数百円程度に抑えることが可能です。
電力会社へ連絡するだけで手続きができる場合もあり、解約前のステップとして検討しても良いでしょう。
通電停止や長期空き家は火災保険条件に注意
見落としがちなのが火災保険との兼ね合いです。
一部の保険商品では、ライフラインの停止や空き家状態が続くことで住宅用の保険が適用外になったり、契約内容の変更(一般物件への変更)を求められたりすることがあります。
勝手に電気を止めた結果、万が一の際に補償が受けられないリスクがあるため、事前に保険会社への確認が不可欠です。
水道は停止しても大丈夫?
長期間まったく水を使わない状態が続くと、トラブルにつながることもあります。
そのため、使用予定がないから即停止ではなく、管理状況も踏まえて判断することが大切です。
水道を止めると下水臭や排水トラブルが起きることも
水道を長期間使用しないと、排水管のカーブ部分にある水(封水)が蒸発してしまいます。
この水がなくなると、下水の臭いや害虫が家の中に直接侵入してくる原因となります。
また、配管内の錆びつきや、パッキン類の乾燥による劣化が進み、将来的に再開した際に漏水トラブルを招くリスクもあります。
庭木の水やりや定期清掃をするなら継続も検討する
実家の掃除や換気に通うのであれば、水道は継続しておいた方が無難です。
掃除での拭き掃除はもちろん、庭木がある場合は水やりが欠かせません。
枯れた庭木は近隣トラブルや火災のリスク、さらには資産価値の低下にもつながります。
空き家管理サービスを利用する場合の通水条件を確認
もし空き家管理サービスを利用する予定があるなら、契約条件を確認しましょう。
多くのサービスでは通水(蛇口をひねって水を流す作業)がメニューに含まれており、水道契約が継続されていることが前提となっています。
管理会社に任せることで、封水切れや配管の劣化を効果的に防ぐことができます。
ガスは使わないなら停止を検討しよう
電気や水道に比べ、ガスの必要性は限定的です。
ガス機器を使用する予定がない場合は、閉栓を検討することも少なくありません。
しかし、寒冷地や給湯器の管理状況によっては注意点があります。
給湯器の凍結リスクがないなら閉栓を検討する
ガスを使用する主な設備はガスコンロ、お風呂、給湯器です。
人が住んでいないのであれば、ガスコンロやお風呂は使いません。
給湯器の凍結防止機能は電気で動くものが多いため、水抜きさえ適切に行っていれば、ガスを止めても問題ないケースが大半です。
ガスは基本料金が比較的高めなため、解約を検討してもよいでしょう。
火災・ガス漏れリスクを減らせるのが最大のメリット
ガスを止める(閉栓する)最大のメリットは、家全体の安全性が向上することです。
誰もいない家でガス漏れが発生しても、すぐに気づくことはできません。
閉栓の手続きをしておけば、地震などの災害時にガスが原因で火災が発生するリスクを物理的に排除できるため、精神的な安心感にもつながります。
親の代わりに子が手続きを進める際のポイント
いざライフラインの停止や変更をしようとしても、契約名義が親のままであることが、手続きのハードルになります。
スムーズに進めるためには、事前に必要な情報を整理しておくことが大切です。
親名義でも子が代行できる?必要な書類と伝え方のコツ
ほとんどの電力会社や水道局、ガス会社では、家族(子)による代行手続きが可能です。
電話やオンラインで連絡する際は、まず「契約者本人は施設に入所しており、子が管理を代行している」という状況を明確に伝えましょう。
多くの場合は、親の生年月日や住所、電話番号による本人確認で受け付けてもらえます。
場合によっては委任状や本人確認書類が必要になることもあるため、不安な場合は各契約会社へ事前確認しておきましょう。
検針票(お客様番号)がない場合の問い合わせ先
実家を探しても検針票が見つからないという場合でも、諦める必要はありません。
各事業者のカスタマーセンターへ連絡し、住所、氏名、登録電話番号を伝えることで、お客様番号を照会してもらえます。
どの電力会社やガス会社と契約しているか自体が不明な場合は、実家に届いている請求書を確認するか、銀行口座の引き落とし履歴、クレジットカードの明細をチェックしましょう。
光熱費以外にも見直したい固定費
光熱費の整理と合わせて、毎月自動的に引き落とされる支出も一気に洗い出しましょう。
毎月数千円でも、長期間積み重なると大きな負担になるため、一度整理しておくことが大切です。
NHK受信料・固定電話・新聞・ネット回線の停止
施設入所後の実家では、利用しなくなった契約がそのまま継続されていることがあります。
たとえば次のようなものです。
- NHK受信料
- 固定電話
- 新聞
- インターネット回線
固定電話は、親との連絡用として残していたものの、施設側との連絡が携帯電話中心になり不要になるケースもあります。
インターネット回線も、防犯カメラや見守り機器を使用しないなら停止できる可能性があります。
こうした固定費は一つひとつは小さくても、長期的には大きな負担になります。
光熱費とあわせて、実家全体の固定費を整理していくことが大切です。
【関連記事】親が施設に入所したら固定電話は解約すべき?休止との違いや注意点を解説
空き家状態になったら火災保険の種別変更を忘れずに
実家が長期間空き家になる場合は、火災保険の契約内容にも注意が必要です。
一般的な住宅向けの火災保険は、人が住んでいることを前提に契約されています。
長期間空き家になると住宅用から一般物件(店舗や事務所と同じ扱い)へと種別変更が必要になるケースが多く、これを怠ると、万が一の際に保険金が支払われないという最悪の事態になりかねません。
空き家になることが確定した時点で、必ず代理店や保険会社へ通知しましょう。
将来の売却を見据えているなら居住実態に注意
親が施設へ入ったあと「いずれ実家を売却するかもしれない」と考える家庭も少なくありません。
その場合、空き家になってからの管理状況や居住実態が、税制面で影響するケースがあります。
不動産売却時の特例制度を検討している場合は、早い段階から意識しておくことが大切です。
空き家特例(3,000万円控除)を受けるための要件
相続した空き家を売却する際は、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる制度があります。
この特例を受けるためには「親が施設に入る直前までその家に住んでいたこと」や「施設入所後、家が事業や貸し付けに使われていないこと」などの厳しい要件があります。
制度の適用には居住の実態を証明する必要があり、その際に重要な役割を果たすのがライフラインの記録です。
また、制度内容は変更されることもあるため、最新情報は税理士や自治体などへ確認することが大切です。
参考:被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例|国税庁
光熱費の領収書が「住んでいた証拠」になるケース
税務署から居住実態の確認を求められた際に、電気や水道の使用履歴は非常に強力な証拠となります。
安易に早い段階で全てを解約してしまうと、後から「いつまで住んでいたか」を客観的に証明するのが難しくなることがあります。
空き家の特例の利用を検討している場合は、入所前後の領収書や通知書を捨てずに保管し、税理士などの専門家と「いつ解約するのが税務上ベストか」を相談しておくことをおすすめします。
遠方で管理が難しい場合の代替案
親の実家が遠方にある場合、定期的に通うだけでも大きな負担になります。
仕事や子育てなどがあると、頻繁な管理は現実的ではありません。
その結果、空き家状態が長引き、老朽化や近隣トラブルにつながるケースもあります。
無理に家族だけで抱え込まず、外部サービスの活用や売却も含めて検討することが大切です。
空き家管理サービスを利用して通水・換気を外注する
遠方で管理が難しい場合は、空き家管理サービスを利用する方法があります。
月額数千円〜1万円程度の費用で、スタッフが定期的に実家を訪れ、窓を開けての換気や、配管の錆び・臭いを防ぐための通水を代行してくれます。
近隣から見ても放置されている家に見えにくくなる点もメリットです。
サービスを利用する場合、水道や電気の契約継続が必須条件となることが多いため、サービス料金と光熱費の基本料金を合わせた予算を組んでおくと安心です。
負動産になるのを防ぐために早期売却・活用を検討する
誰も住まない実家を長期間放置すると、維持費や管理負担だけが増えていくことがあります。
固定資産税や光熱費、修繕費などが継続的に発生すると、持っているだけで負担になる家になってしまうケースもあります。
いわゆる負動産と呼ばれる状態です。
そのため、将来的に誰も住まなかったり、活用予定がなかったりするのであれば、早めに売却や活用を検討することも重要です。
施設入所をきっかけに「実家を今後どうするか」を家族で話し合っておくことで、将来的な負担を減らしやすくなるでしょう。
【関連記事】親が施設に入ったら実家はどうする?4つの選択肢と注意点を解説
【関連記事】実家を売却するのが寂しい…気持ちを整理する考え方とは
まとめ|迷ったときは「今後住む予定があるか」で判断する
実家の光熱費は「誰も住んでいないから全部止めればいい」と単純に判断できるものではありません。
電気は防犯や換気のために残した方がよいケースがあり、水道も管理を行うなら継続が必要になることがあります。
一方で、使う予定がないガスは閉栓を検討しやすいでしょう。
また、施設費用と実家の維持費が二重負担になるケースも多いため、光熱費だけでなく、固定電話やネット回線、火災保険なども含めて固定費全体を見直すことが大切です。
迷ったときは「親が今後自宅へ戻る可能性があるか」「将来的にその家をどうする予定か」を基準に考えてみてください。
実家を売却するのか、空き家として維持するのかによって、残すべき契約は変わります。
施設入所をきっかけに、家族で今後の方向性を話し合っておくことが、将来的な負担を減らす第一歩になるでしょう。