「親が介護施設に入所することになったけど、誰もいなくなる実家はどうすればいいのだろう」
親が施設に入ると、実家が空き家になるケースが多く、放置してよいのか、売却するべきなのか判断に迷うものです。
さらに、空き家の管理や費用、将来の相続問題なども関わってくるため、簡単に結論を出せない方も多いでしょう。
この記事では、親が施設に入った後の実家の主な選択肢や、それぞれのメリット・注意点などをわかりやすく解説します。
実家の扱いで後悔しないためにも、ぜひ参考にしてみてください。
親が施設に入った実家の4つの選択肢
親が施設に入った場合の実家の主な選択肢は、次の4つです。
- 空き家として維持・管理する
- 賃貸に出して収益化する
- 売却して現金化する
- 子どもや親族が住む
それぞれにメリットと注意点があるため、家族の状況や将来を踏まえて検討することが大切です。
空き家にして維持・管理する
親が施設から自宅に戻る可能性がある場合や、すぐに売却や賃貸を決められない場合には、空き家のままにすることも少なくありません。
空き家として維持する場合でも、定期的な管理は必要です。
長期間人が住んでいない家は傷みやすく、湿気やカビ、害虫の発生などが起こることがあります。
庭の雑草や郵便物の放置などは、近隣住民とのトラブルの原因になることもあります。
そのため、定期的に実家を訪れて換気や掃除を行ったり、空き家管理サービスを利用したりするなど、適切な管理を続けることが大切です。
賃貸に出して収益化する
実家を賃貸住宅として貸し出し、家賃収入を得る方法もあります。
立地が良い場合や住宅として需要がある地域では、賃貸に出すことで資産として活用できるのです。
賃貸に出すと家賃収入を得られるため、維持費の負担を軽減できます。
人が住むことで建物の劣化を防ぎやすいというメリットもあります。
しかし、賃貸に出す場合はリフォーム費用が必要になることがあります。
また、入居者とのトラブルや退去時の原状回復など、管理の手間が発生することも考えておかなければなりません。
管理会社に委託すれば負担を減らすことはできますが、その分管理費がかかる点にも注意が必要です。
売却して現金化する
親が施設に長期間入居する可能性が高い場合には、家を保有し続けるよりも売却した方が合理的なケースがあります。
売却すればまとまった資金を得られるため、施設費用や将来の介護費用に充てることができます。
空き家の管理や固定資産税の負担から解放されるというメリットもあります。
一方で、実家には家族の思い出が詰まっていることも多いため、売却には心理的な抵抗を感じる人も少なくありません。
家族で十分に話し合い、納得したうえで決めることが大切です。
子どもや親族が住む
通勤や生活の利便性が良ければ、実家への住み替えを検討するのも一つの方法です。
親族が住めば空き家にならないため、建物の劣化を防ぎやすくなります。
家を活用しながら維持できるという点でも合理的な方法といえるでしょう。
しかし、将来の相続を考えると、住んでいる人と住んでいない人の間で不公平感が生まれることがあります。
後々のトラブルを防ぐためにも、家族間でルールを決めておくことが大切です。
親が施設に入った実家を空き家のまま放置するリスク
空き家を長期間放置すると様々なリスクが生じます。
人が住んでいない住宅は劣化が早く進みます。
換気がされないことで湿気がたまり、カビや腐食が発生します。
また、雨漏りや設備の不具合に気づくのが遅れ、修繕費が高額になることがあるのです。
防犯面の問題もあります。
空き家は不審者の侵入や不法投棄の対象になりやすく、近隣トラブルの原因になることがあります。
庭の雑草が伸び放題になったり、建物が老朽化して景観を損ねたりすると、近所から苦情が寄せられることも珍しくありません。
費用面の負担も無視できません。
空き家であっても固定資産税や都市計画税はかかり続けます。
定期的な管理や修繕が必要になるため、維持費が積み重なっていきます。
空き家を放置すると、管理面・費用面・近隣関係などの問題が生じるため、早めに今後の方針を決定することが大切です。
施設に入った親の家を売却するメリット
親が施設に入った場合に、実家を売却するという選択は決して珍しいものではありません。
空き家の管理や将来の相続を考えると、合理的な判断になるケースがあります。
売却には様々なメリットがあるため、実家の扱いに悩んでいる場合は選択肢の一つとして検討してみましょう。
施設入居費や介護資金に充当できる
実家の売却で得た資金を親の施設入居費や介護費用に充てることができる点は大きなメリットです。
介護施設の費用は施設の種類や地域によって異なりますが、月額で数万円から数十万円かかる場合もあります。
長期間の入居になると、家族の負担が大きくなります。
実家を売却して資金を確保すれば、施設費用の支払いに余裕が生まれ、家族の経済的負担を軽減できます。
管理の手間や維持費から解放される
実家を所有している限り、固定資産税や修繕費などの維持費が発生します。
空き家であれば定期的な管理も必要です。
売却すれば管理の手間や費用から解放されるため、精神的な負担も軽くなります。
遠方に住んでいて実家の管理が難しい場合には、大きなメリットといえるでしょう。
譲渡所得の特別控除を受けられる可能性がある
実家を売却した場合に、一定の条件を満たせば譲渡所得の特別控除を受けられる可能性があります。
居住用財産を売却した場合には、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例が適用されることがあります。
この制度を利用できれば、売却時の税負担を大きく軽減できる可能性があります。
しかし、適用には条件があるため、税理士や不動産会社などの専門家に確認しましょう。
将来の相続トラブルを未然に防げる
実家は相続トラブルの原因になりやすい資産の一つです。
不動産は現金のように分けやすいものではないため、兄弟姉妹の間で意見が対立することがあります。
実家を売却して現金化しておけば、相続の際に分割しやすくなり、家族間のトラブルを防ぎやすくなるのです。
親名義の実家を売却するための法的ルール
実家の名義が親のままである場合は、子どもが自由に売却できるわけではありません。
不動産の売却は原則として所有者本人の意思によって行うものとされているからです。
親名義の実家を売却する場合は、親の意思能力の有無によって対応方法が変わります。
親が自分で判断できる状態なのか、それとも認知症などで判断能力が低下しているのかによって、手続きは大きく2つに分かれます。
親の意思能力があるなら委任状での売却
親が家を売ることをしっかり理解しており、売却に同意している場合は、親が自ら売主となります。
本人が施設にいて契約の場に立ち会えないときは、子どもなどを代理人とする委任状を作成して手続きを進めます。
不動産会社や司法書士は、なりすまし防止のために施設へ直接面会に行き、親に売却の意思があることを確認します。
確認の際に、親の受け答えがしっかりしていないと、手続きが止まってしまうことがあるため注意が必要です。
認知症などで意思能力が低下しているなら成年後見制度を利用
親の認知症が進行し、契約の内容を理解するのが難しい(意思能力がない)と判断された場合は、委任状による売却はできません。
意思能力がない場合は、家庭裁判所に申し立てをして成年後見人を選任してもらう必要があります。
成年後見人が選任されると、親の財産管理を法的に行えるようになります。
家庭裁判所の許可を得たうえで実家を売却することが可能になるのです。
一度後見人が選任されると、基本的には親が亡くなるまで制度が継続します。
弁護士や司法書士などが選任されると、継続的な報酬が発生する場合もあります。
そのため、制度の利用を検討する際には、家族だけで判断するのではなく、専門家や家庭裁判所の相談窓口などに相談することが大切です。
施設に入った親の家を売却する際の注意点
実家を売却は、家族の感情や将来の相続問題などにも関わる重要な判断になるため、慎重に進めることが大切です。
施設に入った親の家を売却する際に気をつけたいポイントについて解説します。
親の意思をできるだけ尊重する
実家は親にとって長年暮らしてきた大切な家です。
家族にとっても思い出の詰まった場所であるため、売却を進める際には親の意思をできるだけ尊重することが大切です。
親が施設に入ったからといって、子どもだけで売却を決めてしまうと、後になって親が悲しい思いをすることもあります。
売却を検討している理由や今後の生活のことを丁寧に説明し、親の考えをできる限り尊重しましょう。
親が自宅に戻る可能性も考慮する
施設に入ったからといって、必ずしも一生施設で生活するとは限りません。
体調が回復したり、在宅介護が可能になったりした場合は、自宅に戻るケースもあります。
売却を検討する際は、親が自宅に戻る可能性についても考えておく必要があります。
短期間の入居であれば、すぐに売却するのではなく、しばらく様子を見るという選択も考えられるでしょう。
膨大な家財道具の整理を早めに始める
実家じまいで最も体力を奪われるのが片付けです。
数十年分の荷物は想像を超える量があり、売却が決まってから数日で終わるものではありません。
親が施設にいる間に、少しずつ不用品の処分を始めましょう。
通帳や権利証などの貴重品、親が大切にしていた思い出の品の仕分けは、時間がかかる作業です。
早めに手をつけることで、売却時のバタバタを避けられます。
兄弟姉妹などの推定相続人間で方針を共有しておく
実家は将来の相続に関わる重要な財産です。
売却を進める際は、兄弟姉妹などの推定相続人の間で方針を共有しておくことが大切です。
もし一部の家族だけで売却を決めてしまうと、「勝手に売った」「相談してほしかった」といった不満が生まれ、家族関係が悪化する原因になることがあります。
売却の理由や資金の使い道などを事前に説明し、できるだけ家族全員が納得できる形で進めましょう。
話し合いをしておくことで、将来の相続トラブルを防ぐことにもつながります。
親が認知症になる前に検討しておきたい家族信託
実家の売却において壁となるのが、親の認知症です。
判断能力が不十分とみなされると、たとえ家族でも家を売ることはおろか、大規模な修繕や賃貸契約もできなくなります。
こうした事態を防ぐための有効な手段が家族信託です。
家族信託とは、親(財産の所有者)が自分の財産の管理や処分を、信頼できる家族に任せる仕組みです。
たとえば、親が元気なうちに「実家の管理や売却を子どもに任せる」という契約を結んでおくことで、将来親の判断能力が低下した場合でも、子どもが実家の売却や管理を進められます。
家族信託を利用すれば、成年後見制度を使わなくても柔軟に財産管理ができるため、実家の扱いを検討する際の選択肢の一つとして考えられます。
まとめ
親が施設に入った後の実家には、空き家として維持する、賃貸に出す、売却する、親族が住む、といった複数の選択肢があります。
どの方法にもメリットとデメリットがあるため、家族の状況や将来を見据えて判断することが大切です。
空き家のまま放置すると劣化や防犯、費用面などさまざまなリスクがあるため、早めに方向性を決めることが重要です。
また、売却を検討する場合は、親の意思能力や法的な手続き、家族間の合意なども慎重に進める必要があります。
実家の問題は、介護・お金・相続が重なる重要なテーマです。
後悔のない選択をするためにも、家族でしっかり話し合い、必要に応じて専門家の力も借りながら進めていきましょう。